飯田 敦夫(京都大学大学院医学研究科 グローバルCOE特定研究員)

2012年12月29日土曜日

仕事納めの訪問者

2012年、OBブログとして再始動した1年が終わろうとしています。
飯田です。デス。DEATH。

今日は、東京のサイエンスカフェ(魚夜みのだNight)で一緒になった筑波大学の学生さんが研究室を見学に来ました。


















東京にも魚を持参して行きましたが、やはり飼育室で大量の水槽を見てもらってこその布教活動です。


















↑アルビノゼブラフィッシュです。

水槽の後は、研究室外のイベントには(機器的、遺伝子組換え的な意味で)持ち出せない光るゼブラフィッシュ胚も見てもらいました。


















以前、財団の方が訪問された時もやっていたのですが、顕微鏡の接眼レンズとデジカメを密着させて写真を撮っても割と上手くいくんです。
































写真は、赤血球が赤く光る魚を撮影しているところです。

ということで、飯田の2012年は魚類の布教活動で〆られました。
(※厳密にはまだエサやり等で出勤しますが。)

それでは。2013年も研究をエンジョイしようと思います。
バッドエナジーに気をつけて、スマイルで。
飯田でした。

2012年12月24日月曜日

珍獣探しの旅

メリークリスマス。飯田です。
この週末は東方に珍獣探しの旅に出ていました。

まずは名古屋の世界のメダカ館に行き、飼育員の方と卵胎生メダカ(カダヤシ目)についで話をしてきました。


















メダカ館ではアマゾンモーリーという、メスしかいない魚を紹介してもらい、今後何か面白い研究のヒントがあるのではないかとお話をしてきました。

その後東京に移動し、井の頭公園の自然文化園に行きました。
ここは小学生くらいの頃に行った記憶があり、かねてから再訪問したいと思っていた場所です。














































規模的に珍獣はいなかったですが、水生園の展示水槽はとてもきれいにメンテナンスされていて、とても動物愛を感じる施設でした。

そして夜は、以前サイエンスカフェ『魚夜』を開催させて頂いたWEcafeさんの忘年会的イベント「みのだNight!」に参加してきました。


















ここではトナカイカチューシャをつけたりお魚トークをしたり、自分自身が珍獣化するという有様でした。
今回は一般の方の他に、以前サイエンスカフェに登壇した虫やサンゴの研究者や、その他にも分野の近い院生さんが参加していたため、かなり幅広い話ができて、予想以上に得るものがありました。

最後は、ちょうど天皇誕生日ということで、新幹線に乗る前に皇居の一般参賀に参加してきました。
4月のJAPAN PRIZEの授賞式ほどは近くなかったですが、天皇陛下をはじめ皇族の方々に再会(?)しました。

このように、2012年最後の連休は「珍獣探し(=研究のネタ探し)」の名の下に物見遊山に耽っておったという有様です。
今年はもう一回くらい更新します。飯田でした。

2012年12月16日日曜日

【学術論文】ホモが嫌いな女子なんていません!

こんにちは。飯田です。
タイトルがちょっとアレですが、まさしくそんな内容だったので・・・。

以前、飼っている魚のオス同士が交尾っぽい行動をしたと紹介しました。

video
2012年6月7研究ブログ:魚の世界にボーイズラブ?【BL】より

もしかすると、その魚のBL(ボーイズラブ)的行動の意味が、ドイツのグループにより英国王立協会の専門誌に報告されたのかも知れません。
日本語紹介記事:モテないオスの魚、モテるオスの魚と交尾することでメスとの交尾チャンスを増やす
原著論文(英語):Homosexual behaviour increases male attractiveness to females (Biology Letters, 2013 vol. 9 no. 1)

内容を曲解しつつ意訳すると『イケメンとイチャイチャしてると女性にもモテる」ということでしょうか。
冒頭(Introduction)にウディ・アレンの「Bisexuality immediately doubles your chances for a date on Saturday night.(両性愛は土曜の夜のデートのチャンスを倍増させる)」という言葉が引用してあるのもオシャレな論文です。
飯田としては自分の目で見て「不思議だなー?」と思いつつも、その意義を解析するチャンスもアイデアも無かったので、ただただ興味深くこの記事を読むことができました。

ちょっと脱線すると、げんしけん(作:木尾士目)という漫画の有名なフレーズ『ホモが嫌いな女子なんていません!』もこれに通ずるのかなーと思いながら、自分の観察した事柄にひとつの解答らしきものが提示されたことを喜んでいます。

こんな面白いことに気付けなかったとは、まだまだ魚への愛が足りない・・・。
飯田でした。

2012年12月7日金曜日

沼津港深海水族館

水族館には『2件』行った!飯田です。

実は先週末は、東京からの帰りに三島で途中下車して、沼津港深海水族館にも行ってきました。


















魚市場の真ん中にある水族館で、規模はそんなに大きくなかったです。



















おおむね近海の深いところで採れる魚が多かった気がします。
暗めのディスプレイが多いので写真もなかなか撮れず・・・。



















深海魚じゃない底ものはこの通り。



















建物の2階はほぼ全域がシーラカンス関連の展示になっています。
これは冷凍標本らしいです。



















実はシーラカンスも子供を魚の状態で産む胎生魚です。
胎生魚がマイブームの飯田としては、上のぬいぐるみを持って帰りたかったです。いやマジで(売店には売ってなかったorz)。



















そして最終的には、総排泄腔を探して超ローアングルで剥製を撮影する不審者と成り果ててました。
見つからなかったけど・・・。

見どころはたくさんありますが、何ぶん規模がそう大きくないので、水族館目当てだけで沼津に降り立つとちょっと時間を持て余すかも。
最初からお魚市場での食事や買い物とセットでプランを立てておくといいかも知れません。




















(自分への)お土産は”生きた化石”ハイギョのぬいぐるみ。
ハイギョには最近注目している超キモカワイイ特徴があるのですが、それはまたの機会に。

また更新します。飯田でしたー。

2012年12月2日日曜日

葛西臨海水族園

こんにちは。飯田です。

この週末は、葛西臨海水族園に行ってきました。
先月のサイエンスカフェで園の解説スタッフの方と知り合う縁があり、初めてのビジター訪問です。



















主目的は、”子供を産む魚”シャイナーサーフパーチを見ることでした。























それだけだと地味なので、他のポイントも紹介すると、
葛西臨海水族園はバックヤードが普通に覗ける構造になっている部分があって、何回行ってもそこが一番のお気に入りです。

例えば、普通の水槽の上には電気は1個しかついてないけど、
























水草の入っている水槽の上には、光合成のためにえげつない数の電気がついていたりします。























ほとんどの人は気にも留めないでしょうけど、魚の飼育に携わってる人間としては「ニヤリ( ̄ー ̄)」としてしまうポイントです。
他にも様々なところの工夫が見られて、バックヤードチラ見せの魚業界内での人気は高いのではないかと思っています。

また、この日は「マグロたちのスーパーパワー」という特別講演もやっていて、それも聴いてきました。




















ブログ読者の中に参加された方がいるとすれば、最後の方でマグロの体温についての質問してた人いたでしょ?
あれ、飯田です(笑)

で、水族園の後は関東の魚の研究者で懇親会を開きました。


















先月買った金魚帽子に加えて、水族園ショップで購入したハリセンボン帽子で親睦を深めました。
飯田自身も初めて会う方が何人かいて、他分野の新鮮な話が聞けて満足です。

最後にちょっとだけフォローしとくと、実験試料を受け取るという職務上の用件もちゃんと遂行していますから。


















週末に物見遊山に耽った分、明日から顕微鏡に張り付いてひたすら観察します。観察します。観察します。←大切なことなので3回言った。

飯田でした。

2012年11月25日日曜日

DS【男子小学生】

3連休を風邪の余韻で棒に振りました。飯田です。

連休最終日の今日は、9月の京都大学アカデミックデイで知り合った小学生とそのお父さんが魚類飼育室を見学に来ました。
研究室外のイベントだと、遺伝子組換え動物(光る魚)は持ち出せないため、9月にした「研究所まで来てくれたら本物見せるよ」という約束が2ヶ月ぶりに果たされたわけです。

魚だけじゃなく、顕微鏡に関しても、アカデミックデイに持参した実体顕微鏡よりも格段によく見えるものがあるわけで、



















↑透明ゼブラフィッシュとか、





























↑光る遺伝子組換えゼブラフィッシュとか、とにかくありったけ見せて反応を探りました。

その結果、彼が最も興味を示したのは稚魚の餌のゾウリムシのようでした。


















魚好きとしてはちょっと切ない結果でした。
でも、小学生からしてみれば、遺伝子組換え動物なんかよりもゾウリムシの方が、教科書にも載ってて、でも本物を見る機会は滅多に無いレア体験だったと考えればそれなりに納得です。

そして子供は好奇心と行動力のカタマリで、顕微鏡の操作方法をちょっと教えただけで拡大するわピントを工夫するわ、目で確認してからパソコン画面に映してみるわ、色々やっていました。
放っといたら一日中いじくりまわして遊んでいるのではないかと思うほど。
将来有望。15年後を見越したリクルート活動という感じで。

しかし、この「意外に好反応だった。」という感想も、裏返せばボクが相手の目線で物を考えていなかったということなので、今後も老若男女万人にウケるような営業力&コミュ力を磨かなくてはと感じました。
研鑽研鑽アンド研鑽。

飯田でした。

2012年11月13日火曜日

国際シンポジウム@奈良

こんにちは。飯田です。

11月12-13日は奈良で開催されたInternational symposium 2012 Neuro Vascular Wiringに参加してきました。


















このシンポジウムは、2011年の国際科学技術財団研究助成の選考委員である現・京都大学の高橋淑子教授が代表を務める、新学術領域研究「血管—神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構」の主催で行なわれたものです。
























奈良ということで、お約束通りにせんとくんと写真を撮ったり、
























シカと戯れたりしていたら、他の先生に「シカと遊んでる変な人がいると思ったら飯田さんだった」と言われる始末・・・。



















今回は、発表が奈良県新公会堂の能楽ホールで行なわれるというオシャンティーなシンポジウムでした。
中身も血管と神経に特化した内容ばかりなので、濃いというか、全てが何かしら自分の研究にも関わりそうでとても勉強になり、同時に焦りを覚える2日間でした。いや全く。



















そして懇親会では、2012年の助成者である大阪大の村松先生にお会いしました。
(※京大組(右2名)とそれ以外(左2名)のテンションの差は学風の違いです多分)

ということで、とても得るものの多い有意義な2日間を過ごしてきました。

次はおそらく魚ネタでブログ書きます。
飯田でした。

2012年11月8日木曜日

須磨海浜水族園

こんにちは。飯田です。
神戸市立須磨海浜水族園に行ってきました。

なんでこういう展開になったかと言うと、9月の小型魚類研究会にスマスイの飼育員さんが参加されていて、そこで知り合った縁で「一度見学に行かせてください!」となったわけです。


















特徴的な△屋根の、須磨海浜水族園。



















園に向かう途中の道路でも、キューティーオブジェが子供達のハートを鷲掴み!
※写真はオッサンですが。


そしてスマスイ内部へ。
職業柄、淡水魚を中心に色々と案内してもらいました。



















他のどの水族館よりもアクティブでサービス精神溢れるオオサンショウウオ。

そして、



















ピラルクが下から覗けるアマゾン館の大型水槽です。

そして一行はバックヤードへ。



















バックヤードには予備の水槽とか、貯水槽などの機器がてんこ盛り。



















さっきは下から見たピラルク(矢印)を、上から見下ろすなど。



















所狭しと水槽が並ぶ。


そして、魚の専門家達を相手に魚のトークをするという、ある意味での地獄絵図(笑)


















前半は「魚と哺乳類で共通する発生イベントを追う」みたいな感じで、後半は「魚だからこそのキモカワイイ(ユニークな)発生イベントを追う」みたいな話を。



















最後は『茶話会』という何の懇親会までご馳走になりました。
ありがとう須磨海浜水族園。ありがとうシーク・イン”K氏”。

『魚』をキーワードに「研究」と「飼育」の交流イベントだと思って下さい。
こういうのも大事。多分。きっと。いや必ず。

飯田でした。

2012年10月15日月曜日

サイエンスカフェ【魚夜】

いつも通りでケツカッチンでバイヤー(〆切ぎりぎりでヤバい)です。飯田です。

今日は、自分のイベントのアピールです。
10月24日に東京で、比較的少人数でのサイエンスカフェを開催させてもらいます。
イベント詳細は以下の通りです。


WEcafe vol.29「魚夜~サカナイト~」























日時:2012年10月27日(土)18:00-19:30(17:30開場)
司会:蓑田裕美さん (国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ)
会場:cafe&bar さんさき坂(東京・谷中)
対象:学生・社会人
費用:300円 + 別途ワンドリンク以上のオーダーをお願い致します。
定員:13名(メールフォームによる事前申込制・先着順)
主催:ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス(WEcafe)
   一般財団法人 武田計測先端知財団


内容的には先月の京都大学アカデミックデイ(9月2日の研究ブログ)の内容をフリートーク向けに改変しつつ、新アイテムのミニ顕微鏡のお披露目をと画策しています。
カフェで気軽に魚の卵(2日胚)を観察してもらおうと考えています。























一番の課題は、日々忍び寄る秋の涼しさの中、魚の卵がいつも通りの成長具合を見せてくれれるか、です。
その辺に加えて、今後の営業活動の色々な試金石を含ませつつも、楽しいイベントにしたいと思います。

別の出張も兼ねて上京するので、財団にお邪魔させていただく時間はありませんが(財団の方々への牽制)、久々の東京で楽しい週末を送っていきたいと思います。

今回は会場の都合で先着13名が定員ですが、お呼びがかかれば全国どこでも出張しますので、何かいい話があれば連絡ください!(自己PR)
飯田でした。はい。

2012年10月9日火曜日

となりのノーベル賞

ごきげんよう。飯田です。

2012年のノーベル医学・生理学賞の受賞者が山中・ガードン両博士に決定しました。
とにかくめでたいですね。










今年の財団の「ストックホルム国際青年科学セミナー」も例年以上にテンションが上がることでしょう。

山中先生が所長を務める京都大学iPS細胞研究所は、飯田の所属する再生医科学研究所とほとんどお隣と言って差し支えない位置関係にあるので、ミーハー心丸出しでちょっと見に行ってみました。


















が、今日がノーベル賞の発表日だということをすっかり失念して、名古屋まで金魚の水草を買いに行っていた(実話)のため、一番盛り上がったであろう時間帯を逃してしまうという残念な結果になりました。
写真は、かろうじてたどり着いた21時頃のiPS細胞研究所です。
報道陣らしき人達が4〜5人チラホラいた程度でした。無念。

しかしながら日本人25年ぶりの医学・生理学賞は嬉しいことなので、少し受賞内容についてのおさらいをしておきましょう。

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最初にゴードン博士の研究についてです。

今回の医学・生理学賞の受賞のキーワードは「初期化」です。
ここでは簡単に、初期化とは『細胞が生殖細胞と同じ状態に戻ること』と取り決めましょう。
生殖細胞は、体を作る様々な細胞(筋肉、神経、血液など)に変化することが出来ます。
この変化を「分化」と呼びます。

通常、分化した細胞(例えば”皮フ”の細胞)は、自分以外の細胞に分化する能力を失ってしまっています。
このことについて、以下の2つの仮説を考えることができます。
A. 分化に伴って細胞の遺伝情報は壊されたりして失われてしまい、遺伝子の有無で細胞の性質が決まる
B. 分化しても細胞の遺伝情報は全てが保存されていて、遺伝子の活性化のオンオフで細胞の性質が決まる
この2つの仮説のうち、どちらが正しいかをカエル(オタマジャクシ)を使って検証したのが1962年のガードン博士の実験になります。



























まず最初に紫外線照射などにより、カエルの卵の核(遺伝情報)を壊してしまいます。→
すると、遺伝情報をもたない卵は体作りができなくなって、死んでしまいます。→①'
そこで博士達は、オタマジャクシの分化した細胞(皮フなど)から核を取り出して、核を失った卵に移植しました。→
ここで、もし仮説Aが正しいとしたら、分化した細胞はその細胞になるのに必要な遺伝子以外を失ってしまっていることになります。だとすると、卵は成長することができずに死んでしまいます。→③'
ところが、仮説Bが正しいとしたら、卵に移植された核は初期化を起こし、もう一度オタマジャクシの体作りを行なえるかも知れません。→
結果は、仮説Bを支持するように細胞核の初期化が起こり、オタマジャクシに成長しました。→

この実験によりガードン博士達は「分化した細胞の核であっても、生き物の体作りに必要な遺伝情報を全て保持している。細胞種ごとの遺伝子の活性化は、遺伝子そのものを壊したりはせずに、働くためのスイッチのオンオフで制御している。」ということを示し、「分化した細胞でも初期化により未分化な状態(卵みたいな)に戻すことができる。」ということを証明しました。

さて、ここまでで「細胞は初期化できる」ということが分かりました。
しかし、卵へ核を移植したときに「どのような条件が初期化に効いているのか」は長いあいだ謎のままでした。
それを解明し、培養条件下で哺乳類の細胞を初期化させる方法を2006年に見いだしたのが山中博士の研究になります。

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山中博士達は、ヒトから採取した皮フの細胞に、たった4つの遺伝子を人工的に導入することで、動物の初期胚から採取できる未分化細胞(ES細胞:embryonic stem cells)に似ている細胞を誘導できることを発見しました。→
この誘導は分化→未分化への”初期化”であり、誘導した細胞にiPS細胞(induced pluripotent stem cellsという名前を付けました。→
ヒトやマウスにはおよそ2万個の遺伝子があるのですが、そこから4つまで絞り込んだというところからこの研究の凄まじさが窺い知れると思います。

さらに、iPS細胞はES細胞と同様に様々な細胞に分化する能力を持っており、筋肉や血球、生殖細胞などに分化させるための実験手法が次々に明らかになっています。→
動物の胚(受精卵)から細胞を採取するES細胞に比べ、iPS細胞は大人の皮フ細胞から作ることができるため、倫理的な問題が軽減されるというメリットがあります。
これら特性を生かして、病気の原因の解明や治療、細胞分化の研究に大きな進展を与えることができると期待されています。

また、最近の研究成果では、マウスのiPS細胞から機能的な生殖細胞を作ることに成功しています。
これはクローン作成の技術に繋がるため、ヒトへの応用に関しては慎重になる必要がありますが、どのように生殖細胞ができるのかという仕組みの理解に大きく貢献する成果です。
つまり、iPS細胞は難病の治療に貢献できる技術であると同時に、生き物の体作りを理解する上でとても重要な研究材料であると考えることができます。

このように、ガードン博士達が1962年にその存在を示した”初期化”という現象について、50年の時を経てその仕組みに迫ろうとしているのが山中博士達のiPS細胞というわけです。

以上の成果によって、今回めでたくノーベル賞を受賞したわけですが、これらの研究はまだまだ発展途上です。
病気の治療への応用はもとより、初期化の仕組みの全容の解明もこれから。
山中博士が日本での研究により開発に成功したiPS細胞研究に対して、今後も皆さんの理解とご支援が得られればと思います。

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ちょっとテンション上がって書きはじめましたが、意外に疲れました。
いや、ホントに(-_-;)

最後に、ここを見つけてしまった専門家の皆様にお願いです。
このサイトは研究の面白さを幅広くお楽しみ頂くため邪魔にならない程度の差し障りのない与太話をお楽しみいただくブログです。
(間違いがあってもお許しください(>_<))

次はお魚のとりとめのない話にします。したいです。
飯田でした。

2012年10月2日火曜日

【アルビノ】学生時代の研究【復帰突然変異】

ご無沙汰しています。飯田です。
今日は魚を使った小話として、学生時代の研究内容を紹介します。

これまで、このブログでもしつこいくらいにアルビノへの愛を説いてきました。
そのルーツは学生時代の研究テーマに起因します。
その頃、飯田は名古屋大学理学部の堀寛研究室で「メダカのアルビノ変異体」と「トランスポゾン」をキーワードとした研究に従事していました。

アルビノは、このブログではもうおなじみですね。
黒い色素を欠いた「白化」と呼ばれる突然変異です。


















では、トランスポゾンとは何でしょう?

生き物の遺伝子は、染色体と呼ばれるとても長いDNAの鎖の中に、それぞれの遺伝情報を含んだ塩基配列(A, T, G, Cの4種類の組み合わせ)の形で保存されています。
塩基配列はとても丈夫で、ちょっとやそっとのことでは壊れたり変化したりはしません。

ところが、染色体の中には自ら進んで自分の場所を変化させるトランスポゾン【動く遺伝子】と呼ばれる塩基配列が存在します。
トランスポゾンは染色体のある場所から、別の場所へと自分自身の配列をカット&ペースト(ときにはコピー&ペースト)で移動します。






















トランスポゾンが動いた場合、抜けたところは両端が繋がり、入った部分の配列は分断されます。
そこで、ごくごく稀に、トランスポゾンが移動する際に遺伝子の途中に割り込んでしまう場合があります。

事実、メダカにおいて、ある種のアルビノ突然変異はトランスポゾンの移動による遺伝子の分断が原因になっています。
チロシナーゼという黒い色素(メラニン)を作るために必要な遺伝子が分断されて働かなくなっているのです。文末 参考文献1




















一般的にトランスポゾンは、脊椎動物ではもうほとんど壊れてしまっていて、移動したり遺伝子を分断したりする能力は失ってしまっていると考えられていました。
しかし、メダカではごく最近、そのような移動&分断が起こりアルビノ変異を引き起こしました。
つまり、脊椎動物の中でもメダカのトランスポゾンはまだ生きていて、動けるものがあるという可能性が示唆されたのです。

そこで飯田は「最近移動して分断されたなら、もう一回動けばチロシナーゼが元に戻る(体の色が黒くなる)のではないか?」と考えました。
そんな折、研究室で飼っている別のアルビノ系統(弱いアルビノで黒い色素細胞が少なくなる文末 参考文献2)の子供の中に、野生型と同じ黒い体色の魚を見つけました。

























遺伝子というのは本来かなり安定で、親の遺伝的な形質はきちんと子供に受け継がれます。
つまりアルビノの両親から生まれる子供は全部アルビノのはずでした。
しかしここで、再びトランスポゾンが移動して子供に復帰突然変異(アルビノ→黒色)が起こった可能性が出てきました。

そこで飯田は、遺伝子の構造を調査しました。























その結果、チロシナーゼ遺伝子を分断して壊してしまっていたトランスポゾンが、きれいさっぱりどこかに移動していなくなってしまっていました。文末 参考文献3、4

つまり、アルビノ変異を起こした”遠くない過去”だけでなく、”現在”においてもメダカのトランスポゾンは染色体の中を動き回って、突然変異を引き起こす能力を持っていたのです。
このことから、哺乳類などの他の脊椎動物においても「もうトランスポゾンは動かない」のではなく「今でも動いているが見つかっていないだけ」という考え方を提唱&支持しています。

また他にも、脊椎動物の進化におけるトランスポゾンの貢献の度合いが、従来考えられていたよりも大きいのではないかという疑問を投げかけました。
















「トランスポゾンにより突然変異が起こる」ということは、生き物が『昔のすがた』から『現在のすがた』に変化する途中で、トランスポゾンにより多くの『中間体』が生み出されていた可能性を考えることができます。
しかも「トランスポゾンによる突然変異は同じくらいの頻度で元に戻ってしまう」と考えると、この「中間体」達はすぐにその姿を消してしまい、遺伝子の塩基配列にもトランスポゾンの痕跡を残すことができなかったと推測されます。

つまり、現在でも検出可能な遺伝情報内の痕跡から推定されている以上に、トランスポゾンは生物の進化における多様化の試行錯誤に貢献しているのではないかと、このメダカのアルビノを使った研究から考察することが可能となったわけです。

-おしまい-

参考文献
1. Koga A, Inagaki H, Bessho Y, Hori H.
Insertion of a novel transposable element in the tyrosinase gene is responsible for an albino mutation in the medaka fish, Oryzias latipes.
Molecular Genetics and Genomics (1995)

2. Iida A, Inagaki H, Suzuki M, Wakamatsu Y, Hori H, Koga A.
The tyrosinase gene of the i(b) albino mutant of the medaka fish carries a transposable element insertion in the promoter region.
Pigment Cell Research (2004)

3. Iida A, Takamatsu N, Hori H, Wakamatsu Y, Shimada A, Shima A, Koga A.
Reversion mutation of ib oculocutaneous albinism to wild-type pigmentation in medaka fish.
Pigment Cell Research (2005)

4. Koga A, Iida A, Hori H, Shimada A, Shima A.
Vertebrate DNA transposon as a natural mutator: the medaka fish Tol2 element contributes to genetic variation without recognizable traces.
Molecular Biology and Evolution (2006)


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と、かつてない長文をここまで最後まで読んでくださりありがとうございました。
次はいつも通りお気楽な記事にします。
書いてる方も疲れました。

飯田でした。