飯田 敦夫(京都大学大学院医学研究科 グローバルCOE特定研究員)

2012年8月6日月曜日

【後輩の】スケスケ金魚【facebook】

こんにちは。
8月最初の更新です。飯田です。

先日、何気なくfacebookでタイムラインを眺めていたら、ひとつ気になるものが。























拡大します。




















聡明な研究ブログ読者のみなさんなら2秒でお気づきでしょう?
そう、先日のエントリーで紹介した透明ゼブラフィッシュの金魚版です。




















え?2秒で気付きませんでした??
それはおそらく魚への愛情が足りないのです。要精進です(笑)
とまあ、職業病的なアレはさておき、これは大変興味深いと飯田は思います。

透明ゼブラフィッシュは、神経堤細胞(neural crest cells)という、色素細胞を作るために必要な細胞に異常が起こっている変異体です。
厳密に言えば、神経堤細胞で重要な働きをする遺伝子(仮に”A”とします)に異常があります。
神経堤細胞で遺伝子”A”が働くことは体表の色素細胞を作ることに必要ですが、眼を黒くするための色素上皮は他の細胞に由来することが分かっています。
なので、この透明ゼブラフィッシュは体からは色が失われますが、眼は黒のままという状態です。




















では、透明金魚では何が起こっているのでしょうか?
もしかするとゼブラフィッシュと同じ遺伝子”A”が壊れていて、神経堤細胞から色素細胞が作れないのかも知れません。
しかし、同じ様な働きをしている別の遺伝子"B"に異常があって、結果的に同じ透明になっているのかも知れません。
しかし、金魚が透明になっている原因を調べる上では、ゼブラフィッシュで分かっている『神経堤細胞』と『遺伝子"A"』というキーワードがとても役に立ちます。

今回は金魚の体の色に関する事柄ですが、これがもし他の生物の、もっと人の役に立ちそうな機能(マグロで大トロ部分を増やす遺伝子とか)を調べたいと思った時に、ゼブラフィッシュなどの実験動物で参考になる情報があったら便利だと思いませんか?
これが、実験動物を使ってからだの仕組みを調べて、その情報を蓄えることの、大きな目的のひとつです。


----[話題転換]----

以上の話の中で「色素がなくなるのか。じゃあアルビノ(白化)だな!」と思った人はいますでしょうか?
『透明ゼブラフィッシュ=アルビノ』は広い意味では間違っていませんが、厳密にはベツモノと考えてください。

一般的な認識としてアルビノとは、以下のような感じです(メダカの場合)。



















魚以外でイメージする場合は、白毛に赤目のウサギさんを思い浮かべて下さい。














先ほど、透明ゼブラフィッシュは「眼は黒いまま」と紹介しました。
それは神経堤細胞が眼の黒化には関与しないからです。
では、アルビノはなぜ眼からも黒色がなくなる(血の色で赤くなる)のでしょう?

答えは『黒色色素(メラニン)そのものが無いから』です。
例えばメダカのアルビノだと、チロシナーゼというメラニンを作るための酵素が壊れています。
黒色自体を作れないので、体表だろうが眼だろうが黒化できないというわけです。

では、生物種を問わずに「体が白い&目が赤い」のがアルビノなのでしょうか?
答えは『NO』です。


----[話題転換]----

ヒトやウサギなどの哺乳類は、色素細胞といえばメラニン(黒色)の一種類しか作ることができません。
ところが、魚は黒の他に”黄”、”白”、”虹(光沢)”の色素細胞を作ることができます。
つまり厳密には、魚類のメラニン欠損は「白化」ではないのです。
”黄”、”白”、”虹”は残っているのです。
メダカだとピンとこないので、ゼブラフィッシュのアルビノの写真を下に示します。













”白”と”虹”は分かりにくいですが、”黄”の要素がメダカよりも強いので、黒系の色を欠くとオレンジ色っぽくなります。
では、金魚ではどうでしょう?

以下のURLにアルビノの金魚の写真があります(飯田はアルビノ金魚を持っていない)。



金魚(赤色種)はさらに黒色の要素が少なく、黄系の要素が強いので、黒を欠くアルビノであってもぱっと見分かりません。
ただし、眼の黒色はメラニンに依存しているので、目が赤色で、奇しくも体表と同じような色になっています。


----[まとめます]----

なかなか長くなってきちゃったので、そろそろまとめましょう。
一言に『体の色が無くなる突然変異』と言っても、
・色が無くなる原因にも色々あります(神経堤細胞、メラニン合成)
・ヒトとサカナだと持っている色素細胞の種類が違います(哺乳類1種類<魚類4種類)
・なのでサカナの場合『アルビノ=白化』とは限りません
という、後輩のfacebookをきっかけにこれだけのことを連想/妄想していました。

もし皆さんの身近で『透明=体が白くて目が黒い』や『アルビノ=体に黒色がなくて目が赤い』生き物が出現したら飯田までご一報ください。
その他にも”面白い生き物”の情報を待ってます!

飯田でした。

6 件のコメント:

  1. 榛葉健一(国際科学技術財団)2012年8月7日 8:32

    出勤して一番に飯田さんのブログを開けて、またまた、一気に読んでしまいました。 素人の私にはスケスケもアルビノもたいして変わらなく見えていましたが、この説明を読んで“納得!”しました。今日もひとつ賢くなりました。面白い生き物、見つけたらご報告します。FBにも書きましたが、アメリカに住んでいた頃によく庭で見かけた、攻撃されると死んだふりをするオポッサムを東京のど真ん中、市ヶ谷の外堀公園で発見!世界物流が動物の分布も変えたことを実感しました。

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  2. 飯田敦夫@京都大2012年8月7日 18:57

    貴重な朝の時間を割いて頂いてありがとうございます!
    今回の記事はちょっと一般向け(中学生くらいでも簡単に分かるくらい)までには噛み砕けなかったと反省気味だったので、そう言ってもらえると嬉しいです。

    最近、京都の鴨川でも外来種のヌートリアが話題になってます。
    http://b.hatena.ne.jp/articles/201208/9906
    僕自身も何回か見かけたことあります。
    日常を注意深く過ごしていれば、街中でもたくさんの『面白い生き物』が見つかると思ってます。

    余談ですが、東京の夏って羽が透明なミンミンゼミが多いんですよね。
    名古屋は京都は茶色のアブラゼミが多いんですけど。
    これって、木の多い田舎だと茶色い羽が保護色になるけど、東京はビルが多く透明な羽が有利だかららしいです。
    学生時代に東京に行ってこの事実に気付いたときは、無駄にとても感動しましたw

    これからも、そういう、役に立たないトリビアな感動を探していきたいです。

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  3. 榛葉健一(国際科学技術財団)2012年8月9日 9:11

    明日の朝、ミンミンゼミを探してみます!また、賢くなりました。榛葉健一

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  4. 飯田敦夫@京都大学2012年8月11日 11:06

    実は今東京にいるんですけど、セミの鳴き声をあまり聞かないです。
    やけに涼しいですし。
    今日少し研究的な打ち合せをして、京都に戻ります。

    時間に余裕のある上京の時は、財団に遊びに行かせて下さい!

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  5. 飯田先生、夏休みに入っていてブログ見落としました。
    次回上京の折は是非とも、財団にお立ち寄りください!!
    財団は9月から新しいオフィスです。 今のビルの道を挟んだ
    向こう側にアークヒルズ(ANAホテルのある)がありますが、
    そこのアーク森ビルの35階です。9月3日営業開始!
    是非是非お立ち寄りください。
    榛葉健一

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  6. 飯田敦夫@京都大学2012年8月22日 10:17

    引っ越し通知のお手紙が届いていました。
    いつもありがとうございます。
    10月終わりに東京に用事があるので、平日に寄ることが出来そうなら改めて打診します。

    新しいオフィス、ワクワクしますよね。

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